今夜、きみの手に触れさせて
「青依ちゃん」
「?」
「オレのこと、好き……?」
見あげた目の先で、前を向いたまま独り言のように矢代くんがつぶやいた。
……うん!
声にならなかったけど、ブンとうなずく。
「どこがいーの?」
クルッと動いたいたずらな目が微笑んだ。
「え……っと、優しいとこと、笑った顔」
こ、声が裏返りそう。
「オレはね、すぐに真っ赤になるとこが可愛くて、好き」
柔らかな声が静かに響いた。
「ほらね」
そうささやいた矢代くんの指が、頬に触れる。
わたしの髪を絡ませて遊ぶ指先。
ただ、されるままになって、透けるように明るい瞳の奥を見つめていた。
吸い込まれるままに……。