今夜、きみの手に触れさせて
「早く、ろっ骨治んねーかな」
一瞬、矢代くんの腕の中にフワッと包まれる。
「もっと思いっきし抱き締めるのに」
そうつぶやいて、矢代くん、あ、いや、純太くん……は、そっと体を離した。
「カレー食う?」
そうして今度は可愛い笑顔をわたしに向ける。
「あ、うん。もうお昼なんだね」
てっきりレトルトのカレーだと思い、返事をすると、
「おしっ」と純太くんは立ちあがった。
引き戸を開けると、暖かな空気がゆったりとこっちに流れてくる。
水道の音につられて様子をうかがえば、彼は流し台に立って、野菜をゴロゴロと洗いだしたところだった。
「あの、手伝おうか?」
キッチンまで行って声をかける。
「いーよ、青依ちゃんは。座って待っときな」
純太くんはいともあっさりとそう答えた。
見ていると彼の手の中で、じゃがいもがスルスルとキレイに皮をむかれていく。
う、うまい……。