今夜、きみの手に触れさせて


手伝うなんて言ったけど、わたし、カレーの作り方すら覚えてないや。


肉って炒めてから入れるんだっけ?


何分ぐらい煮込むんだ?


ピーラーがあれば、ニンジンの皮ぐらいはむけるけど……。




純太くんは水を張ったボウルに、皮をむいたじゃがいもをちゃぷんと沈めていく。


「急だったから薄切りの肉しかないけど、いい?」


なんて、彼が突然振り向いた。


い、いーいですとも、いーですとも。


コクコクとうなずく。




リビングに戻るのも気が引けて突っ立っているわたしの心情がわかるのか、彼はタオルで手を拭くと、本棚からマンガの本を数冊持ってきてくれた。




「ハイ、これが青依ちゃんへの一押し」


純太くんはキッチンのテーブルに、それらをデンと置く。


ちょっと可愛い絵柄のマンガ。




「これ読んで少しだけ待ってて」


なんて、優しい。


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