今夜、きみの手に触れさせて


「純太くんって、お料理とかする人なんだね」


お言葉に甘えて椅子に腰かけながらそう言うと、彼は手を止めることなく答えた。


「あー……、スゲー久しぶりだぜ?」


「包丁とか、すごい上手でビックリした」


「うちの家、小学生の頃は夕飯作るの当番制だったんだ。だから慣れてるだけ。今はもうやってないよ」


純太くんはコンロに少し大ぶりの鍋をセットしながらそう言う。




「当番制やめたの?」


「うん。もう誰も食わねーし」


「え?」


「母親は……遅くまで仕事するようになったから、基本職場で食って帰るし」


「そっかー。でもえらいんだね、自分のことちゃんとできて」




うちはお母さんが全部やってくれるから、わたしは何もしない。


食べ終わったお皿すら片づけもせずにテーブルに放置している。


恥ずかしいな。


今日からは、せめて食器洗いぐらい手伝おうかな。


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