今夜、きみの手に触れさせて


「別に凝った料理はしねーよ。誰にでもできるもんしか作んないし」


「でもわたし、できないかも」


カレーも作れない。




「書いてあんだよ、箱の裏に。カレーもシチューもマーボー豆腐も、箱に作り方が書いてあるから、その通りにやれば、誰でもできるの」


彼はスラッとそう言った。


ひとりぼっちのキッチンで、パッケージに記されたレシピを見ながらご飯を作っていた小学生の純太くんーー。


想像すると、なんだかいじらしくて……胸がキュッとした。




料理を待つ間、彼が勧めてくれたマンガの本を手に取ってみる。


手持ち無沙汰で読み始めると、なんと読みふけってしまった。


何これ、すっごい面白い……!




ときどきクスクス笑ったり、ジーンと感動して鼻をすすったりすると、純太くんがのぞきにくる。


「どこどこ、どのページ?」って。


で、「あー、そのシーンなー」って、うれしそうに納得して、料理に戻っていくんだ。


フフ。ちょっとマンガおたくの純太くん。


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