今夜、きみの手に触れさせて


「え、宿題?」


「うん。ちゃんとやってんだぜ、プリント集」


なんでもないようにそう言うと、純太くんはカレーをまたひとさじすくう。




「数学とか、答え見てもさっぱりわかんねーから、ちょいちょい前川んとこ行って教わってんの」


「前川って、担任の前川先生?」


驚いて聞き返すと、彼はカレーをほおばりながら「うん」とうなずいた。




「すごいね、それ」


「しつけーんだよ、やらねーと。で、まだまだ残ってるから、ちょうど前川んとこ聞きに行こうと思ってたんだ。

それ、青依ちゃんが教えてくれる?」


「もちろん!」


うれしくなって、力いっぱいうなずいた。


だって、それなら役に立てそうだもん。




「オレ、バカだから、幻滅すると思うぜ」


「しないよ、そんなの! わたしだってカレー作れないもん」


手をグーにして力説すると、純太くんがプハッと笑った。




「じゃー、よろしく」



< 293 / 469 >

この作品をシェア

pagetop