今夜、きみの手に触れさせて
「え、宿題?」
「うん。ちゃんとやってんだぜ、プリント集」
なんでもないようにそう言うと、純太くんはカレーをまたひとさじすくう。
「数学とか、答え見てもさっぱりわかんねーから、ちょいちょい前川んとこ行って教わってんの」
「前川って、担任の前川先生?」
驚いて聞き返すと、彼はカレーをほおばりながら「うん」とうなずいた。
「すごいね、それ」
「しつけーんだよ、やらねーと。で、まだまだ残ってるから、ちょうど前川んとこ聞きに行こうと思ってたんだ。
それ、青依ちゃんが教えてくれる?」
「もちろん!」
うれしくなって、力いっぱいうなずいた。
だって、それなら役に立てそうだもん。
「オレ、バカだから、幻滅すると思うぜ」
「しないよ、そんなの! わたしだってカレー作れないもん」
手をグーにして力説すると、純太くんがプハッと笑った。
「じゃー、よろしく」