今夜、きみの手に触れさせて


「朝は親が仕事行くとき閉めてくんだよ」


壁にもたれ、あぐらの上に置いたコミックに視線を落としたまま、オレは気のない返事をした。


「寝てんのかと思って、結構ピンポン鳴らしたんだけどな。鍵かけてどっか行ってたの?」


と修吾はしつこい。


「あー、かも……」


適当に答えて話を終わらせた。




やっぱ来たんだ、こいつ。


インターホンの電源切っといて正解だったな。


あの子がいるときにこいつらが来たら、めんどくせーもん。






「あれっ、純太、カレー作ったのか?」


キッチンにセルフサービスの麦茶をくみに行った修吾が、素っ頓狂な声をあげる。


ルーの空箱でも見つけたようだ。




「……まーな」


「ひっさしぶりだなー、お前のカレー! 昔はよく食ったよなぁ」


こっちの返事が聞こえたのかわかんねーけど、やつは向こうでがなり立てている。



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