今夜、きみの手に触れさせて


「食ってけよ」


「えっ、いいのか? やった!」


やっぱ聞こえてんだ。


何がうれしいのか、テンションMAXの修吾の声がキッチンから響いてきた。




「へ~、純太、カレーなんか作れちゃうんだ?」


ヤスが横ちょで驚いている。


「まーな」


「案外器用なんだ?」


「まーな」


「青依ちゃん、うまいっつってた?」


「まーな。……あ。えっ?」


どうやら誘導尋問に引っかかったらしく、ヤスはゲラゲラと笑いだした。




「お前さー、ピンポン鳴らないように細工しただろ? オレらを締め出して、いたいけな少女を連れ込んで、何やってんだよ~」


チョンチョンとひじでオレを突っつき、ヤスは今日もニヤニヤ顔を炸裂させる。クソ。




「何もしてねーし」


「へ~。じゃー青依ちゃんとふたりっきりになりたかったんだ?」




グッ、と言葉につまった。


「プッハ、かっわいー、純太くん!」




クソ。こいつ……。



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