今夜、きみの手に触れさせて
「ガキの頃はヤンチャだったんだぜ、純太は。いつも元気に動きまわってた。家の手伝いもよくやってたしな」
修吾が懐かしげに語った。
「別に。オレがやらなきゃ誰もしねーもん」
夕飯も、後片づけも、洗濯物を取り入れてたたむのだって、兄貴は当番サボってばっかだったからな。
そーすると仕事から帰ってきた母親がやらなきゃなんねーし、オレはそれがヤだったっけ。
疲れてんのにかわいそうってのもあったけど、
イラつかれたりタメ息つかれたりすんのが、たまんなかったんだ……。
「こんなにできるんなら、今だって毎日おばさんに夕飯作っといてやりゃあいーのに」
ヤスが軽くそう言った。
「いや、今はあの人、職場で食って帰るようになったからさ」
「ふ~ん」
兄貴が死んでから、母親は夜遅くまで仕事のシフトを入れるようになった。
オレに手がかからなくなったからか、
万年人手不足の勤め先から頼まれてのことなのか、
わかんねーけど。