今夜、きみの手に触れさせて


いや、


毎月少しずつ払ってるという兄貴の事故の慰謝料に充てるためなのかもしれないし、


兄貴がいなくなった食卓が、淋しくて耐えられなくて避けてるのかもしれない。




それとも……


首を絞めて殺そうとした息子と、ふたりっきりで飯を食うなんて、拷問みたいで重てーのかもな。




あー、それはこっちか……。






「だけど月島とつきあえてよかったよな、純太は」


ぼんやり考えてると、唐突に修吾が言った。


「は?」


「だんだんと、元の純太に戻ってくみたいだ」


は……。




「な~に言ってんだか」


「色を失くしちまったお前の日々に、少しずつ色が灯っていくみたいで、うれしーんだよ、オレは」


修吾は真顔でそんなことを言った。




「そーゆーキモいことをスで言えるのが、お前の特徴な」


と、オレはそっぽを向く。



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