今夜、きみの手に触れさせて


あー……。

それはそうと聞きたいことがあった。




「修吾さー、制服余ってねー?」


恥かきついでに、この際頼んどくか。


「んっ、制服?」


「オレの小さくなったから、お前が着らんなくなったの余ってねーかと思って」




修吾は昔からデカかったくせに、中学入ってからもスクスク育って、制服もたぶん何着か買い換えてるはずだ。


「おー、あると思うぜ。うちの母親、物を捨てらんないビョーキだからな、絶対どっかにしまってある」




夏休み、職員室の前川んとこ行くとき、久々に制服を着てみたら、ズボンは短けーし、シャツは窮屈になっていてビックリした。


オレの制服は、死んだ兄貴のお古で……


あんなにデカいと思ってた中三のときの兄貴の背丈を、オレはどうやら、もう越してしまっているらしい。




4歳ちがいだから、兄貴が中三のとき、オレは小学5年だった。


オレにとって兄貴は、絶対に勝てない強くて大きな存在だったのに、


あの頃の兄貴よりも、自分のほうがデカいだなんて……。




なんだか不思議で


なんでか……淋しかった。




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