今夜、きみの手に触れさせて


それからオレらは黙ってカレーを食った。


兄貴の死から連想されるオレと母さんとの出来事については、お互いに口を閉ざしたままだった。




母さんがオレの首を絞めたこと――。




言わなくたってわかってるんだ。


母さんは、オレが憎くて殺そうとしたんじゃないって。


オレを一緒に連れて死にたかったんだって。


残されるオレが可哀想で、置いてはいけなかったんだって。




そんなことはわかってる。




だから……


だからこそ……


そんな母に抵抗して、拒絶してしまったことが、オレはずっと後ろめたかった。


絶望して、ひとりぼっちで川に身を投げた母が、可哀想だった。


たまたま助かっただけで、最後の最後に母さんの命を絶ったのは自分だったんだと思うと、


オレはそれが、ずっとずっと苦しかった……。



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