今夜、きみの手に触れさせて
兄貴が死んでから、このipodはオレのものになった。
さびしいときも
悲しいときも
このスイッチを押しさえすれば
いつも兄貴をそばに感じた……。
兄貴はこん中で、どの曲が好きだった?
この歌の、ここの歌詞、スゲーいいよな?
歌詞に……想いを重ねる女の子はいたのか?
重ねる夢は、あったのか?
ここに入っていた曲の、一曲一曲に、
兄貴の魂が宿っているような気がして、
オレはこいつを、ずっとずっと大切にしてきたんだ。
だけど……
チラッとうかがうと、青依ちゃんが今にも泣き出しそうな顔で、オレを見あげている。
唇をキュッと結んで。
あー……、怒れねー……。
「いーよ、もう気にしなくて」
ヘラッとそう言って笑って見せると、青依ちゃんは困った顔のまま、それでも小さな安堵の息をついた。