今夜、きみの手に触れさせて
新学期――。
「おっはよー」
「元気だった?」
懐かしい声が教室に響く。
夏休みが終わってしまった気だるさは、教室の喧騒に難なく飲み込まれていった。
黒板。机。窓から射す光。
風に揺れるカーテン。
校庭の風景。廊下を走る足音。
うん、この感じ。
日常が目覚めていく。
「青依~」
「律ちゃん!」
塾で日々会っていたけれど、律ちゃんとしゃべるのは、なんか久々な気がした。
「ラブラブな3日間はどうだった?」
「へへ……」
「後でゆっくり聞かせてよ~」
予鈴が鳴り、それぞれの席に分かれていく。
わたしの席は教室のほぼ真ん中あたり。
律ちゃんはもっと後ろのほう。
1学期の終わりに『みんなしゃべり過ぎだ』って、先生がキレて席替えしたときに離れちゃったんだ。