今夜、きみの手に触れさせて
「おー、純太、来たか」
後方から、修吾くんの声が教室に響いた。
「オレ……何組?」
入り口の木枠に片手をかけながら、純太くんは修吾くんを見る。
「プハッ、忘れんなよ。ここだ、ここ。オレと一緒だ、1組だ」
修吾くんは超うれしそうに立ちあがった。
そうして、教卓の真ん前の席を指差す。
「お前の席、そこな」
いつのまにか定位置となっている不登校の彼の席。
「は? ヤなんだけど」
テンション低めにつぶやくと、純太くんは黒板の前をスル―して、窓際へと向かった。
悠然とスタスタ歩いていく。
なぜかクラス全員でその様子を見守ってしまった。
『あれ誰?』
『矢代純太だよ。ほら、不登校の……』
わたしの後ろの席で、女子がふたりささやきあっている。
『へぇ、初めて見た。結構イケてない?』
『うん、思った! あんなカッコよかったっけ』
昨日とは違い、ちょっと不機嫌そうな純太くんを見て、ふたりの女子は声を弾ませていた。