今夜、きみの手に触れさせて
窓際の列の、前から1番目と2番目の席には女子が座っていて、純太くんはその次の席の男子生徒の前で足を止める。
「なー、席替わってくんない?」
純太くんはスラッとそう言った。
なんの迷いもなく、無遠慮にその子を見下ろしながら。
「え」
見あげる男子は小西くんっていう、ちょっとおとなしめの子。
クラスでも感じの悪い男子から、よくパシられたりしている。
『ウケる~。断れないよ、小西』
『ヘビに睨まれたカエルって感じ? 矢代って、ちょっと怖そーだもんね』
後ろのささやき声がそう言った。
「で、でもボクも、こ、この席気に入ってるし……」
小西くんは口ごもりながらも、一応抵抗を試みている。
「オレさー、苦手なんだよね、学校」
そんな小西君に、顔色ひとつ変えずに純太くんは言った。
「それにろっ骨折れてるし」
それ、席を替わる理由になるの?