今夜、きみの手に触れさせて


「そ、そういうことなら……」


だけど小西くんはそうつぶやいて、すごすごと席を移動しだした。


カバンと、机の中の持ち物を全部抱えて。




なんだか……可哀想だよ。




『やっぱりね~』


その姿を見て、後ろの女子たちはクスクス笑っていたけれど、わたしは笑う気にはなれなかった。


だってわたし、女子の中では小西くんと同じ立ち位置なんだもん。




『席替わって』もそうだけど、
『宿題写させて』とか簡単に言われちゃう。


校外学習の班を決めるときに人数が合わなくて
『別のグループに行ってよ』なんて、面と向かって言われたこともある。


『なんで、わたしが?』とは聞けなかった。


だって答えはわかっているから。


わたしはみんなの中で、そういう存在なんだ……。




だからわたし、わかるよ。


みんなの前でこんなことになって、きっと小西くん恥ずかしかったよね?






小西くんとわたしは、こっち側の人間。


後ろの女子たちや、純太くんは……


きっと向こう側の人――。




『こっち』とか『向こう』とか、
もう考えるのはよそうと思ってるのに、


どうしても感じてしまう壁――。


< 340 / 469 >

この作品をシェア

pagetop