今夜、きみの手に触れさせて
「そ、そういうことなら……」
だけど小西くんはそうつぶやいて、すごすごと席を移動しだした。
カバンと、机の中の持ち物を全部抱えて。
なんだか……可哀想だよ。
『やっぱりね~』
その姿を見て、後ろの女子たちはクスクス笑っていたけれど、わたしは笑う気にはなれなかった。
だってわたし、女子の中では小西くんと同じ立ち位置なんだもん。
『席替わって』もそうだけど、
『宿題写させて』とか簡単に言われちゃう。
校外学習の班を決めるときに人数が合わなくて
『別のグループに行ってよ』なんて、面と向かって言われたこともある。
『なんで、わたしが?』とは聞けなかった。
だって答えはわかっているから。
わたしはみんなの中で、そういう存在なんだ……。
だからわたし、わかるよ。
みんなの前でこんなことになって、きっと小西くん恥ずかしかったよね?
小西くんとわたしは、こっち側の人間。
後ろの女子たちや、純太くんは……
きっと向こう側の人――。
『こっち』とか『向こう』とか、
もう考えるのはよそうと思ってるのに、
どうしても感じてしまう壁――。