今夜、きみの手に触れさせて
「じゃあ、わたしこっちだから」
コンビニの前で、来た道とは逆の方向を指差して、わたしは彼にバイバイを告げた。
「送んなくていーの?」
矢代くんはやっぱりスラッと聞いてくれる。
「うん。塾のときとか、もっと遅い時間に帰ってるから平気」
「そっか」
矢代くんの澄んだ瞳が真っ直ぐこっちに向けられた。
「オレ学校にいないからさー、小川翠になんかされたら、修吾に言って」
そう矢代くんは言う。
一応気にしてくれてるんだね。
「うん」
吸い込まれそうな茶色い目――。
こんなふうに見つめられるのは、きっともうこれが最後……。
そう思うと、胸がキュンとした。