今夜、きみの手に触れさせて
始業式の翌日、
オレは小川翠と一緒に帰った。
「ねー、純太とこーして並んで歩くのなんか、小学校のとき以来だよね」
夏休みが終わったって、まだ夏だ。
空には太陽がギラギラしている。
隣を歩く翠の声が、楽しそうに弾んでいた。
「カン違いすんなよ。オレさー、お前に話あんだよね」
明るい日差しが眩しくて、こんな時間にこんな風に歩いてる自分が、まだ信じらんない。
周りにワサワサと下校中の制服の中で、オレだけが偽物みたいな気がして仕方なかった。
「お前さー、オレが女とつきあうと、いつもその子呼び出してシメてんだろ」
オレがそ-ゆーと、翠は気まずそうな顔をした。
「だって……。あの子たち純太のこと、ちっともわかってないんだもん。彼女のくせに純太の悲しいこととか、つらい気持ちとか、何も見えてないから」
そう言ってうつむいた翠は、かなりめんどくさいやつだ。
まー、修吾みたいなもんだな。