今夜、きみの手に触れさせて


「別にオレがいーなら、お前には関係ねーだろーが」


「だって、ムカつく……」


翠は唇をキュッと噛んで、涙ぐんだ。


訂正。
修吾よりもコイツのほうが断然めんどくせー。




「けどまー、これからはそーゆーこと、もうやめてくんない?」


足を止めて、オレは言った。




「さっき言ったけど、オレ彼女できたから」


続いて足を止めた翠が、顔をあげてオレを見る。




「それ……ホントなの?」


「うん」




あー、絶対泣く。
だから言いたくなかったんだ。


でも、言わなきゃ何のためにこーして一緒に帰ってきたんだか、わかんねーもんな。




案の定、翠の目からは涙がドバッとあふれ出てきて、オレはそれを見ながら、しばらくぼんやりと突っ立ってたんだ。



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