今夜、きみの手に触れさせて
ふたりは自転車を押しながら、並んで帰っていく。
オレと帰るのはイヤがるくせに、孝也とは平気なんだ……。
そんな思いが頭をかすめる。
そんで、思わずあとをつけている自分に引いた。
これじゃー本物のストーカーだ。
だけど、
孝也の横にいる青依ちゃんは、知らない女のコのようだった。
孝也とは、スゲー似合ってる。
ベストカップルだ。
そんなにしゃべってるふうには見えないが、お互いに信頼し合っている空気が伝わってくる。
受験が済んでからとか言ってたけど、
孝也はもうあの子に告ったんだろーか?
だとしたら、青依ちゃんはなんて答えた……?
別れ際、別の道を行く孝也の後ろ姿を、青依ちゃんはずっと見送っていた。
たぶんあいつが見えなくなるまで、
ずっとずっとずっと――。
「だろーね」
佇んだままの青依ちゃんから目をそらし、オレは回れ右をして歩き出した。