今夜、きみの手に触れさせて


翌日――


鉛のような足取りで学校へ行った。


教室に入ると、いつも賑やかな女子のグループが、いっせいにこっちを向いた気がした。




「おはよう、月島さん」


席に着こうとしたら、後ろの席の御堂さんから声をかけられる。


なんだか待ち構えていたみたいに。


「あ、おはよう」


あいさつを返すと、御堂さんは手にしたスマホを、なぜかこっちに向けてきた。


ケータイは教室へは持ち込み禁止だから、普段はあんまり出したりしないんだけど。




「ね、見てよ、これ」


「う……ん」


御堂さんのスマホの画面は暗くて、夜の道路沿いの風景が映し出されていた。




あっ。こ、これ……。


ドキン、と心臓が鳴る。




「矢代だよね、これ」




そこに映っていたのは、夜の闇の中に照らし出された、純太くんとわたしのキスシーンだった。



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