今夜、きみの手に触れさせて
「こら、深夜徘徊も不純異性交遊も禁止だ、バカ」
先生がゆるくゴチンって、純太くんの頭にげんこつを落とした。
「あのさー、この写真って、学校じゅうのやつらが見ちゃってんの?」
純太くんはケータイを先生に突き返しながら聞く。
「ん~、たぶんな」
「誰だよ、撮ったやつ」
「さぁ、それは知らんが」
「お前、知ってる?」
突然隣の席の子に純太くんは聞いた。
「さ、さあ」
その子も首を横に振る。
「そいつに殺すっつっといて」
純太くんはもう一度前川先生を見あげてそう言うと、プイッと窓の外に顔を向けた。
そうして、その日は授業中も休み時間も一日中、純太くんはずっと外を眺めていた。
純太くんがキレると相当ヤバいって噂が、まことしやかにささやかれ、もう誰も画像の件を話題に出したりしなくなった。