今夜、きみの手に触れさせて


青依ちゃんの泣き顔……。


何回見たかな?


結局オレ、泣かせてばっかだったよな。




青依ちゃんは泣くとき、まず眉が八の字になって、ガマンしてんのか唇をキュッと噛む。


うるうると目に溜まってた涙が、突然ハラハラと音もなく溢れだすんだ。


初めてキスをしたときも泣いてたっけ、あの子……。




青依ちゃんはいつもすぐ泣いちまうけど、なんで泣くのか、おれはイマイチわかってないんだ。


だけど昨夜のはわかるよ。


自分勝手に連れ回して、無理やりあんなことして、ヤだったよな。


家に着くまで青依ちゃんは、しくしくと、ずっと泣いていて、


それがスゲー悲しそうで、


なんかつーかオレ、スゲー……可哀想になった。



あっは、自分が泣かしといて、怒られっけど。






うん。


孝也ならピッタリだ。


もうあの子は、あんな悲しい顔して泣くことはなくなる。


孝也は優しいやつだからな。




窓の外に広がる空を眺めながら、オレはずっとそんなことを考えていた。


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