今夜、きみの手に触れさせて
「純太―、帰んぞー」
終礼が終わると、ヤスが迎えに来て、教室の入り口で大声で呼んだ。
カバンを引っさげ、のそのそと教室を出る。
「っせーよ」
ムスッと言うと、ヤスがプッと笑った。
「キゲン悪っ」
無視して歩き出すと、ヤスも歩調を合わせて横を歩く。
「だから無責任なことすんなっつったのにさ~」
しばらく黙って歩いてると、ヤスが間延びした声を出した。
「っせーから」
あの画像の話はしたくねー。
そーゆーオーラが出てるからか、休み時間に誰もその件には触れて来なかった。
だから、今ヤスに言われるのが初めて。
「青依ちゃんになんか言ってやったの?」
「しゃべってねーし」
「そっか、あのキスの相手が青依ちゃんだってこと、内緒にしてんだもんな。話しかけたりできねーか」
「あー」
ちがうクラスのヤスが知ってるってことは、やっぱ学校のやつらは、みんなあの画像見ちゃってんだな……。
真っ赤になってうつむいていたあの子の姿を思い出す。