今夜、きみの手に触れさせて


「ゴメンって電話してやんなよ」


「いーよ、もう」


ヤスの言葉に気のない返事をした。




「なんで」


「もー終わったから」


ゆっくりと、自分に言い聞かせる。




「は? 何言ってんだよ。キスしてんじゃん」


「あれは無理やり」


「え?」


「終わった」


もう一度そう言った。




「なんだよ、それ。別れたってこと?」


ヤスの声が少し変わる。


「まーな」


「フッたの? フラれたの?」


「つーか、泣かせてばっかだし、オレ。
他の男選んだほーが幸せだろって話」




「だから、そう言われたってこと?」


「いや、でも、きっとそーなる」


「なんだ、それ? 想像?」


ヤスがキョトンと言った。




「ちげーよ。いるんだよ、そーゆーやつが。優しくて誠実で頭良くて、青依ちゃんのこと想ってるやつが」


「そっちがいいって言われたのか?」




熱くなってくオレの言葉を、ヤスは冷静に整理していく。



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