今夜、きみの手に触れさせて


あきらめ体質か。確かに……。


ヤスと別れてからも、オレは歩きながらそのことを考えていた。


いつのまにかオレ、何かに期待すんのをやめちまってるもんな。


期待しても叶わねーことばっかなら、はじめっから背を向けたほうが楽なんだ。




物心ついたときには、親父には捨てられてたし、

兄貴は逝っちまって、

あげく母親には首を絞められ……。

みんながフツーに持ってるものでも、オレには手に入らないことばっか増えてった。




だからオレ、すぐにあきらめちまうのかな。


期待する前に手を放しちまう。


期待して叶わないのが怖いから。


そんなんで、誰かを守れるわけねーのにな。


修吾もヤスも、みんなどっかで踏ん張って、大事なもん守ってんだろーに。




ヤスにどやされちまったけど、オレ、青依ちゃんの泣き顔を、笑顔にできる自信なんてねーもん。


情けないけど、これが本心。



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