今夜、きみの手に触れさせて
だけどな、今回はがんばったほうなんだぜ。
孝也とあの子が歩いてるの見たとき、一旦はあきらめたからな、オレ。
オレなんかより孝也のほうがいいに決まってる。
今気づかなくても、青依ちゃんはいずれ気がつく。
そう思った途端に、動けなくなったんだ。
それでも……。
もう一度話したくて誘い出した。
自分のことわかってほしいなんて、初めて思った。
だけど結果はこの有り様で……。
あの子は泣いちまうし、あんな画像は出回るし。
で、噂になるから、もう近づけねー。
そうこう考えるうちに目的地に着いた。
小学校の裏手にある小さなネジ工場。
ガラガラと引き戸を開けると、そこは作業場になっていて、大きな機械が何台か置かれていた。
機械はあるけど人はいない。
もう廃業しちまってるからな。
「純くん?」
そのとき不意に、懐かしい声が降ってきた。