今夜、きみの手に触れさせて
小さな作業場から一段あがると居住スペースになっていて、そこに人が佇んでいる。
修吾のお母さんだ。
「おばちゃん、全然変わんないじゃん」
照れくさくなってそう言うと、おばちゃんはダダッと靴も履かずに作業場へ駆け下りてきた。
「まぁまぁまぁ、本当に久しぶり」
おばちゃんはオレの腕をつかみ、オレの胸をペチペチ叩く。
「純くん、大きくなって……」
めちゃくちゃ笑顔なのに、おばちゃんの目がみるみる涙で潤んでくる。
アハ、絶対泣くと思ってたんだ。
「修吾に用事?」
「じゃなくて、おばちゃんに用」
オレがそう答えると、おばちゃんは不思議そうにオレを見あげた。
「ちょっとヘコんでるから、おばちゃんのカレー食いに来た」
「まぁ、カレー? 作る作る! 食べてって」
「材料あんの? 買い行こっか?」
「いい、いい、あるある!」
おばちゃんはうれしそうにオレの手を取り、家の奥へと引っ張っていく。
修吾んちにあがるのは、三年ぶりだった。