今夜、きみの手に触れさせて
毎日通ってた子どもの頃と、部屋ん中は何にも変わってない。
おばちゃんは早速キッチンでカレーを作り始めている。
椅子に腰かけながら、オレはダイニングテーブルの上にあるテレビのリモコンに手を伸ばした。
「おっちゃんは? 会社?」
テレビをつけながら声をかける。
「うん、もうすぐ帰ってくるよ。今日は早いって言ってたから」
とおばちゃんは笑った。
「ちゃんとがんばってんだ、おっちゃん」
「ホントはまたネジ工場やりたいんだろうけどね~」
なんて教えてくれる。
経営不振で今はもう廃業した作業所で、おっちゃん達が働くのを見ながら、オレは育った。
「あれっ? 純太?」
ちょうどそのとき帰ってきて、部屋に入るなり声をあげたのは、修吾の姉ちゃん、美晴ちゃんだった。
「どーしたの? ひっさびさじゃない」
「ハハ、しっかり女子高生してんだ、美晴ちゃん」
高校の制服に、でっかいリュック。
久しぶりに会う美晴ちゃんが、すっかり女子高生風なのでちょっと笑った。