今夜、きみの手に触れさせて
「おっ、純太、彼女いるんだ?」
「つーか、もうダメっぽいけど」
軽くタメ息をつく。
「え、別れたの?」
「うん、まぁ……」
「あらら、ダメじゃん」
と苦笑しつつも、美晴ちゃんはドラマをやめにして、録画していた歌番組に切り替えてくれた。
「確か出てたと思うよ、透ちゃん」
早送りで再生していた画面を、美晴ちゃんがリモコンでピタッと止める。
「ほら、これ」
えっ、これ……?
美晴ちゃんが『ちゃん』付けで呼ぶのがわかる。
テレビに映し出されたそいつは、まさに王道のアイドルって感じで、王子様みたいにキラキラ輝いていた。
んで、オレらに向かってニコッと微笑む。
すげー優しそうな笑顔。
「おー……」と言ったきり思わず絶句。
あ、青依ちゃんは、あーゆーやつがタイプなのか。
いや、ムリだろ……。
なんなら寄せていこうかと思ってたのに、そんな希望は一瞬にして吹っ飛んだ。
あーゆーやつに憧れてんだ……。