今夜、きみの手に触れさせて
「えっ、純太か?」
そのとき、部屋の入り口で大きな声がして、振り向くとおっちゃんが棒立ちしていた。
「あ、うん」
思わず立ち上がって挨拶しようとしたら、のしのしとおっちゃんのほうが寄ってきて、大きな手をオレの頭にデンッと乗っけた。
それからオレの頭をグリグリしたり、髪の毛をワシャワシャしたり、ほっぺたをムギュムギュしたりしてくる。
「イ、テーよ……」
オレがボソッと言ったら、おっちゃんは巨体を揺らして「ガッハッハッ」と笑った。
「元気だったか?」
「うん」
修吾もデカくなったと思っていたけど、やっぱりおっちゃんのほうがひとまわりはデカいな。
大きな体も大きな声も、こわもてのくせに笑うといっぺんで子供みたくなっちまうところも、昔と全然変わってなかった。
「かーちゃんは? 元気にしてるか?」
「うん」
おっちゃんも、おばちゃんも、オレがここへ寄りつかなくなった理由については、ひと言も聞かなかった。