今夜、きみの手に触れさせて


「なんでだよ?」


とマジでわかんないらしい。


いーよな、愛されて育ったやつは。




「オレが毎日食っちまうと、向こうは毎日作らなきゃなんないだろ?」


「何言ってんだよ。お前のためなら飯ぐらい、おばさんは毎日作ってくれるって」


修吾は精悍な顔を真っ直ぐこっちに向ける。


だからこいつはめんどくさい……。






町はずれの老人福祉施設で働くうちの母親は、毎晩10時過ぎに帰ってくる。


朝早くから出勤しているけれど、毎日残業しないと人手が足りないらしい。


自分の食事は職場の給食を食べるから、家で母親が作る料理は、ほぼオレ用。


いつもおかずを何種類か冷蔵庫に作り置きしてくれている。


カップめんやらレトルト食品やらの常備も切らしたことはないし、母親の預金口座から引き落とされるコンビニのカードも渡されている。


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