今夜、きみの手に触れさせて


それからオレはおっちゃんに席を譲り、美晴ちゃんの隣へと移った。


テレビに一番近いその席がおっちゃんの定位置で、そこに座って、おっちゃんはもう缶ビールなんか開けちゃっている。


修吾んちのダイニングテーブルはでかくて、8人は余裕で座れるんだ。


オレとか、通いの職人さんとか、昔っから人が集まる家だったから。


キッチンに立つおばちゃんとは、背中が触れちゃうぐらい近くて、オレらは晩ごはんができるまで、4人でゆったりと過ごした。


昔話とか、近況報告とか、ゆるゆると話しながら。





「でも可愛い子なんだろね~、純くんの彼女なら」


出来あがったカレーライスをよそいながら、突如おばちゃんが蒸し返した。




「おっ、彼女いるのか、純太」と、おっちゃん。


「いや、も…」

「もう別れた別れた。元カノ元カノ」


オレが言おうとしたら、先に美晴ちゃんが断言してくる。クソ。


「そっか。可愛い子なんだろなぁ」


おっちゃんもおばちゃんと同じことを言った。



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