今夜、きみの手に触れさせて
「ガキの頃の話だろ? もーそんな趣味ねーし」
ムスッと答えると、やっと席に着いたおばちゃんまでもが、にっこりと笑った。
「いつのまにか足元に咲いている小さなお花みたいな子が好きなんだよね」
ち、小さなお花……?
青依ちゃんの顔が目に浮かぶ。
で、摘むと、しおれちまうんだ……。
「それに引き換え修吾ときたら、高嶺の花みたいな子が好きよね?」
おばちゃんが、今度は困った顔をして笑った。
「そーそー、身の程知らずにも、美しいお嬢様タイプが好きみたい。バカだね~」
と美晴ちゃんがケラケラ笑う。
「自分ちにないものを求めるんじゃねーのか?」
おっちゃんが真顔でそんなことを言って、美晴ちゃんに怒られていた。
「あ~、今もキレーな子とつきあってるもんな、修吾」
オレがそうつぶやいた途端、3人の動きが止まった。
「「えーっ、修吾って彼女いんの~?」」
3人同時に騒ぎ出す。
「あれ? 言ってねーんだ? あいつ」
次の瞬間、怒涛の質問攻めが始まった。
あはは。ガキの頃、オレをネタにして遊んだ罰だ。
オレは聞かれるままに、修吾と彼女の恋バナを洗いざらいしゃべっといてやった。