今夜、きみの手に触れさせて
帰るとき、修吾が表まで見送ってくれた。
「純太、サンキューな」
「あ?」
「親父もかーちゃんも、めっちゃうれしそうだった」
なんて、晴れやかに笑う。
「あー、オレも」
今夜はこっちも素直に返しておくか。
「お前、話、あったんじゃねーの?」
修吾がボソッと口にした。
「え?」
「月島の件」
ああ……。
「別にお前になんか相談しねーよ」
からかい気味にそう言ってみても、修吾はマジな顔をしたままだった。
「どーすんだ? 律によると、純太から別れを告げたみたいになってんぞ」
「あー……」
あの晩、別れ際に『孝也にしとけば』っつったからな。
あれがオレらのラストシーンってわけだ。
「それならそれでちょうどいーだろ。あんな写真が出回ってんだ。とりあえずあの子には近づかない」
それが唯一、オレが今、あの子にしてやれること。