今夜、きみの手に触れさせて


とりあえずカバンからミニタオルを出して、濡れた髪と服を拭く。


「差してもこわれちゃうか」


レジ前のビニール傘に目をやったけど、わたしはあきらめて窓際の雑誌コーナーへ回った。


ここで少し雨宿りしたほうがよさそうだ。




律ちゃんはまだ家を出ていなかったらしく、


『雨がやんでからにしよっか?』


ってラインが来ていた。


『うん。こっちも雨宿り中』


と返しておく。




雑誌のラックから目線をあげると、窓ガラスの向こうに、広い駐車場が水しぶきで真っ白く見える。




すごい雨……。




あ。



大きな道を挟んだ向かい側に、別のコンビニが見えた。


あれはたぶん、あの日矢代くんと行ったコンビニ?


一緒にアイスを食べたところだ。




えー、向こうに行けばよかった。


もしかして矢代くんと、
偶然会えたかもしれないのに……。






やっぱ、わたし……、




もう一度会いたい……。



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