今夜、きみの手に触れさせて


そのとき――

雨音に交じって、ヘンな叫び声が聞こえてきた。




「ん?」


目を凝らすと、このどしゃ降りの雨の中で騒いでる男の子たちがいる。


子どもじゃなくて、結構大きいんだけど……。




追いかけっこ? 遊んでんのかな?


突然できた大きな水たまりに、足をバシャッと踏み入れて水をかけあったり、

押したり引いたりしながら、水たまりの中へ落とし合いっこをしている。


そんなことしなくても、空からザーザー振ってくる雨でびしょ濡れなのに。


雨に打たれながら、走り回って大はしゃぎだ。




あれ? ヤスくん?


よく見ると、どの子も見覚えのある顔で……


うん、間違いなく同じ学年の男子たちだった。




あはは、やだ。子どもみたい。


バカだな~、男子って。


でも、めちゃ楽しそう。




あ、ヤスくんピンチ!


背後から忍び寄る影に突き飛ばされて、ヤスくんは水たまりの中へ転がされた。


その姿を見て、ゲラゲラ笑う横顔――。




え? 矢代くん――?



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