今夜、きみの手に触れさせて
雨は止まない。
このままずっと降り続けばいい。
そうしたらわたしは、ここでこうして雑誌を読んでいる振りをして、
ずうっと矢代くんの背中を見とくよ。
思いがけない出会いに、
ふたを開けて出てきた気持ち。
わたし、矢代くんが好き……。
どんどん引き寄せられてしまう。
ちょっと怖い……よ。
しばらく経って
願いむなしく雨は止み――
塾へ行くために店を出る。
『今から家を出るね~』って、律ちゃんからラインが入ったから。
カバンからミニタオルを出して、手に握っていた。
まだ軒下に集結中の矢代くんに渡せるといいんだけど、
笑顔のお礼に……。