軟派な王子様【完結】
トイレから出て私は驚いた。


「昇君!?」


昇君と目があったのだ。


「遠藤さん!?」

昇君は私に飲み物を買ってきてくれた。

「あっ、お金。」


「いいんだよ。お祝いなんだから。」

昇君は優しく微笑む。


なんだかホッとした。

「ありがとう。」

昇君はすぐに私の変化に気がついた。




「元気ないね。どうかした??」


体から零れ出すように吐き出される言葉。


「なんか…寂しい…。」

馬鹿みたい。
こんなこと言ったらきっと昇君だって困る。


「最初のテンポにズレがあったのは惜しかったよね。でも全体を見る限り大きなミスはなかった。パートごとに裏返った音が多少あったけどあんまり気にならないくらいだったし、何より皆楽しそうにやってたしね。僕は本当にいい演奏だったと思ってる。だからこれを糧にして、もっと沢山の人に聞いてもらえるように頑張ろう??」
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