軟派な王子様【完結】
「かっ翔!!何よ!!」


私がいくら叫んでも、翔は振り返らない。
そして、どんどんと足を早める。


サンダルをカタカタといわせながら私は走るように歩いた。


何も言わない翔に私は痺れを切らして渾身の力で腕を振り切った。

それと同時に翔の足がとまる。



でも、いっこうに私のほうへは振り向かない。


「なんなのよ!!」


私は背中を向けた。


本当に…



翔は何を考えてるのかわからない。

時にクールで、寡黙になる。
そして時に少年になったり、時に素直になる。
意地を張ったり、笑ったり…



それが私を悩ませる…。



突然翔は小さく言った。


「行くなよ。」


「え??」

なんで…

なんでそんなことを…


そんなことを考える暇もなく、翔は私を抱き寄せた。

その腕はだれよりも大きく、初めての翔の胸の中の感覚に私の心臓は飛び上がった。


「俺以外の男と…話さないで…一緒にいないで…笑わないで…。」


「そんなことで…っ!?」


私はそのあと私を落とせるとでも思ってるのって…言い返すつもりだった。

それなのにその言葉がでなかったのは…



翔の腕が震えていたから…。
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