軟派な王子様【完結】
私は気付いた。

昇君の気持ちを私は踏みにじっていた。
ホントに私は最低だ。



「昇君…私昇君に最悪なことしてた。」



私は言わなければならなかった。

最初から。


「ごめんね。やっぱり私、昇君とは付き合えない。」


何を私は迷っていたのだろう。

自分のことだけを考えて、周りを沢山傷つけて…。


昇君の顔は変わらず、いつも通りの穏やかな表情を保っている。



「私…行かなきゃならない。」


「うん。」



昇くんは相変わらず優しい目のまま私を見つめる。


「いってらっしゃい。」

私は…

走り出した。


長い浴衣を両手で抱えながら、雨の中走りつづけた。

目の前はあまりよく見えない。
見えるのはいつか私に向けた翔の生意気に笑った顔。

そして、最後に見た悲しそうで泣きそうにしていたあの時の顔だった。


下駄は走りずらくて、何度も転びそうになった。

その度にこのまま帰ってしまおうかと思ってしまう。
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