軟派な王子様【完結】
私はその日から、何となく昇君のことを避けるようになってしまった。


いつもなら二人で仲良くやっていたパート練習も、ぎこちなくなって後輩を見に行ったり、最後まで残ってやっていた片付けも、場所を変えてしまった。


自分がどうして昇君を意識してしまうのか…。




そのことがなんだか恥ずかしかった。



まだ、昇君が本当に私のことが好きかどうかもわからない癖に、昇君に失礼かもしれない。

だけど、昇君の顔を見ると、顔が急にほてってきて、どうにもこうにもいかなくなってしまう。



「遠藤さん。」



突然のその声は、昇君だということはすぐにわかった。

私は聞こえないふりをしてバイオリンを弾き続けた。


しばらくしたが、昇君が私の名前を呼ぶことはなかった。

なんだか罪悪感にまみれた。



でもどうしても昇君を前にすると体が冷静でいられなくなる。



こんなの…



自分じゃない…。


香織が変なこというから…。
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