軟派な王子様【完結】
私の固まった体と、飛び上がる心臓はそのオレンジを直視できず、俯かせた。



「それだけは…知っててほしい。」


何が起こっているかわからなかった。



いつもなら、昇君の穏やかで優しく聞こえる声。

今日はどこか力強く、どこまでも響く。



むろん私はここ一週間、昇君が気になって仕方がなかった。

だからこそ私はずっと昇君を避けてきたんだと思う。
でも、自分の心が昇君を好きだと言っているのかはまだわからなかった。



私は男が大嫌いだ。



それは今でも変わらない。
ただ、どこか昇君を嫌いになれない自分がいた。



いや…


でも…。



沈黙の中、私の心は右往左往したままゴールを探し続けた。


すると、昇君がまた口を開く。


「いいんだ。僕、今遠藤さんに答えを出してなんて言わないよ。」


私はその意外な言葉に思わず顔をあげる。

そこにはいつものようににこやかな昇君が優しく私を見ていた。

私の心は自然と落ち着きを取り戻す。
< 53 / 148 >

この作品をシェア

pagetop