軟派な王子様【完結】
帰りは深夜になってしまった。



「ったく。」



俺はエレベーターを下りた。


廊下の隅にさっきのおやじと、部屋で話をしていた男が四人、煙草を吸って疲れた背広のまましゃがれた声で話をしていた。




その声はいやでも俺の耳に入ってきた。


「まったく、あの若造社長は困ったもんだな。」


「あぁ、キャバクラがいいっていうから用意してやったのに、今度は会社でいいってどういうことだよ。」


「骨折り損もいいとこだぜ。どこまで気を遣ってあのわがままに付き合えばいいんだか。」


「こっちの話も聞いてんだか聞いてないんだか。だいたいあの若造にこの会社を継がせたのが悪かったんだよ。まったく苦労知らずの坊ちゃんだよ。」





俺は…一度止まった足を走らせるように車まで運んだ。


傷ついてなんかない…。


所詮は…


平社員の戯言だろ…。



なにも…

なにも俺が気にすることなんかじゃねーんだ。
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