軟派な王子様【完結】
俺はいつもの車に乗り込んだ。

「ご自宅直行でよろしいでしょうか。」


「そうしてくれ。」


黒服の運転手は頭を下げてハンドルを握った。


「あの…社長。」


いつもなら到着するまで何も口を開かない黒服の運転手が今日は突然話しかけてきた。


「なんだ。疲れてるんだよ。用件は手短にな。」

俺は何故か苛々する気持ちを押さえられずにいた。



車は深夜を輝くネオンの中で滑るように走り続けた。
俺はその景色を見ながら貧乏ゆすりを始める。


「はい…。実は月曜に息子の小学校の発表会がありまして、休みをいただけないでしょうか。いえ、午前中だけでもいいんです。」


その声は微かに震え、目が泳いでいた。
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