軟派な王子様【完結】
「遠藤さん。」


部活中、今度のバイオリンの演奏会に向けて私は最終節に入っていた。


「あっ、昇くん。」


あの日以来、私と昇くんは前より一層仲が良くなった。


不思議なくらいに何も私は意識をしていなかった。



「そこの節なんだけど、パートを加えてみたらどうかなって。」


昇くんはどう思っているかしらない。


でも、今私は昇くんを部活の仲間だと思っている。


だから私は昇くんに態度を変えたりしなかった。




「うん。そうだね。そうしよう。」


私は楽譜をめくろうと紙に手をかけた。



そこへ昇くんの手が重なった。


私は思わず手を自分の方へ退けた。




「ごめん…。」


すると昇くんは顔を真っ赤にさせて席を立った。


やっぱり…



私も…


昇くんも…




お互い意識をしてしまうのかもしれない。
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