軟派な王子様【完結】
少しだけドキドキした。



昇君は本当にいい人だと思った。

言い表しようのない優しさと、包容力。
そして、知的さと謙虚さ。
爽やかで温かみのあるあの笑顔は男嫌いの私の心を大きく揺さぶった。




それにくらべて隣にいる翔はいつまでもタバコをふかしてかっこつけた髪形を風に揺らしていた。


「あんたどうしていつもそうなわけ…。もう少し場の空気読みなさいよ。」


私はあきれて窓にひじをかけた。



「空気読みすぎたから俺はお前を向かえにきたんだ。お前に悪い虫がついたら俺がもらいにくいからな。」
私はため息をついた。

「ほんと…最低。」


それは車のエンジン音でうまくかき消され、翔には聞こえなかったようだ。
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