軟派な王子様【完結】
俺は久しぶりに夜の街に繰り出していた。


俺が歩けば沢山の女がくっついてくる。
引っ張って来られたキャバクラで、俺は強い酒を飲み続けた。



なんてことを言っちまったんだろう。

そんな後悔が押し寄せる中気になるのはもう一つの事実。



「何で俺には…見せてくれないんだよ…。」


昇にだけ向けた、あの笑顔。
俺が見たことのない笑顔。


だれよりも輝いて、だれよりも美しかった。
あの笑顔はきっと昇が作ってる。

そう思うと自分が情けなくて仕方がない。


そして思い出す、俺に向けた顔。
釣り上がる目と、どこか悲しい口元。


酒の入ったグラスに手を延ばす。


その時、隣のケバい化粧のキャバクラ嬢が高い声をあげた。


「社長さんこんなかわいいストラップ付けてるんですか〜。かわいいー。」


その女が揺らしていたのはビー玉の中にクローバーが入ったストラップ。


「さわんな!!」

俺は携帯を取り上げた。

あの夜、このビー玉は何よりも光って美しかった。

今はただ、そこに釈然と佇み、俺を虚しく見つめ返すだけだった。

頭を抱えるしかない。
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