*深海の底で。~もうひとつの人魚姫~*
好奇心旺盛な彼女だからこそ、俺が気になる。
――ただそれだけのことだ。
勘違いしてはいけない。
厄介なのは、俺に芽生えたフランへの感情だ。
俺が彼女に向けるもの。それはまさしく『愛』だということ……。
早くフランの最愛の人魚が現れればいい。
そうすれば、俺のこの不毛な感情は落胆へと代わり、淡い期待も持たなくてすむ。
こればかりは、俺が持ち得る魔力でもどうにもできない。
――神よ。どうかフランをあきらめさせて欲しい。
最近、俺はそればかりを願っている。
「……ふうん?」
彼女はまだ言い足りないのか、目の奥で光を宿している。
「それよりもいいの? あの子の性格だから、きっと人間の世界を見に行ったわよ?
あんなに人間界のことを気にしているんだもの」
「……だろうな」
「貴方も苦労性ね、さっさとあの子に思いの丈を言っちゃえばいいのに」